なぜ?外国人が多く住む街に選ばれた理由 – 人気の5エリアの傾向とは

インバウンド需要による訪日外国人観光客の増加に伴い、外国人労働者や留学生も年々増加傾向にあります。

直近のデータによると、 令和6年における外国人入国者数(新規入国者数と再入国者数の合計)は、約3,678万人となり、前年に比べ約1,095万人(約42.4%)増加しました。また新規入国者数は約3,402万人で、前年に比べ約1,026万人(約43.2%)増加し、いずれも過去最高となっています。
 (出典:出入国在留管理庁 令和7年1月24日報道発表資料

在留外国人人口が多い都道府県を調べたところ、1位は東京都の701,955人で、2位の愛知県321,041人の2倍超でと突出した数字になっています。3位は大阪府の317,421人、4位の神奈川県280,020人、5位の埼玉県249,327人、6位の千葉県219,131人と続き、上位の首都圏4エリアが目立っているのが分かります。
令和6年6月末時点の総在留外国人は約358.9万人なので、その4エリアで全体の40.4%を占めていることがわかります。
(出展:在留外国人統計(旧登録外国人統計) / 在留外国人統計

さらに都道府県の市区町村別での傾向を調査したところ、在留外国人が多い上位10エリアは以下のような結果となっています。
(出展:都道府県市区町村別 在留外国人、令和6年6月調査)

この記事では、人気エリアの上位5位についてピックアップし、エリアの特徴や在留外国人が多い理由について考えてみたいと思います。

市区町村別の人気エリア

1位の東京都新宿区は、交通アクセスも良好でビジネスにも向くエリア

東京都新宿区には令和7年2月1日時点で48,075人の外国人が在住しており、昨年1位だった川口市を抜き第1位の人口になりました。
(出展:新宿区住民基本台帳の外国人住民国籍別男女別人口
新宿区全体では352,521人が在住していることから(令和7年2月1日現在)、外国人の割合は約13.6%と1割を超えており、区に占める外国人の割合は増加傾向にあります。


新宿区は東京の主要な交通ハブとして機能しており、またオフィス街であることから多くの企業や飲食店関連の仕事が豊富で、観光業の需要も高いエリアであるため、外国人労働者の需要が高く、働きながら生活する上で非常に便利なエリアとして、外国人にも受け止められていると考えられます。

新宿区に住む外国人の在留資格を見てみると、留学目的と答えた18〜19歳は85.4%、20〜29歳では61.2%と若年層では圧倒的で、全体でみても来日目的を「勉強のため」と答えた人も約5割と最も多くなっており、高田馬場付近に日本語学校が多数あることも鑑みると、留学生が集まりやすいエリアであることが伺えます。


また大久保エリアは、韓国を始め、中国やネパール系の外国人が多く住むエリアとなっており、1970年代頃から歌舞伎町で働く外国人が増え始めたことがきっかけだと言われています。1980年代後半には日本語学校や専門学校が設立されたことに伴い、彼らのための飲食店や小売店といった店舗が増えたことでコミュニティはさらに広がり、コリアンタウンとして有名になったようです。
近年外国人向けのシェアハウスも増え、さらに住環境が整ってきていることは、外国人が居住エリアを探す際の好材料の一つになっていると考えられます。

新宿区としての取り組みには、多文化共生・国際交流を目的とした「しんじゅく多文化共生プラザ」があり、日本語教室や外国人相談、外国人の方に役に立つ資料の提供など、多文化共生に向けた取組みを実施しています。在留外国人へのアンケート調査では、地域のイベントやボランティア活動、交流イベントに参加したいという声も見られ、積極的に多文化交流をしたいと感じている人が多く、外国人と日本人同士のコミュニティの形成がより充実するような取り組みが重要になるでしょう。

根強い人気を誇る、埼玉県川口市

埼玉県川口市は、2位となったとはいえ根強い人気があり、コロナ禍の時期に一時的に世帯数の減少が見られたものの、相変わらず根強い人気があります。川口市の人口に占める外国人の割合は、現在約4万人と市人口の約7.3%を占めています(2024年5月末時点)。

川口市は立地的に東京都心へのアクセスが良く、都内で働く上で通勤しやすい利便性があります。また「鋳物の町」として多くの外国人労働者を受け入れてきた歴史的な背景があります。特に1980年代以降は中国残留孤児やその家族が日本への帰国することに伴って、受け入れ先として川口市が選ばれたこともあり、中国人によるコミュニティが形成され、さらに彼らを頼って移住する人も増えていきました。

その他、川口市はまちづくりの方針として「多文化共生施策」を掲げており、労働力不足が懸念される製造業、建設・解体業、介護事業を中心に、様々な国籍の外国人に従事してもらうことによって、人手不足の解消や川口市の財政の向上に期待しているようです。


「多文化共生施策」を担当する協働推進課の取り組みの実例には、どのような施策があるのでしょうか?

  • 日本語教室の充実

    川口市に住む外国人の方に日本語の学習方法についてアンケートを取ったところ、独学と答える方が半数近くいるものの、ボランティア教室に通って学びたいと答える方も3割弱という結果が出ています。
    (出展:川口市多文化共生社会のためのアンケート
    川口市では公民館などを活用して、ボランティアの方が日本語のレベルに応じた教室を開くなど、日本語を学びたいと考える外国人のニーズに対応しており、サポートが充実していることがうかがえます。
  • 外国人の介護職員を対象としたルール・マナー講座の実施

    日本人の特徴(思いやり、おもてなしの心)や職場でのコミュニケーションの取り方など、日本で気持ちよく働くためのビジネスマナーや考え方をレクチャーする講座を実施しており、市全体で外国人が働きやすい環境をサポートしていることが、外国人にとって大きなメリットになり住みやすい地域であると捉えられているのではないでしょうか。
  • 第16回川口市外国人による日本語スピーチコンテスト

    10年以上も取り組みが行われているこのコンテストでは、外国人の方に自身が育った国との文化の違いや、川口市で実際に生活をする中で感じたことなどについて、「日本語」で発表してもらうそうです。コンテストを通じて、互いの文化や生活習慣の違いなどに対して正しく理解を深める機会になり、双方が共に心地よく生活していく上で良い試みになっていると考えられます。また、コンテストへ参加することによって、日本語での会話レベルが向上するきっかけにもなるでしょう。

このように、立地面での優位性だけでなく、長年にわたって積極的に外国人が住みやすい環境を整えてきたことによって、外国人が住みやすい街として一般的にも認知され、今なお外国人の人口が増加している要因になっているのではないでしょうか。

東京都江戸川区や足立区などで、ベトナム人の人口が増加傾向

3位の東京都江戸川区や4位の東京都足立区は、ビジネスや観光のハブとなる新宿区よりも家賃が手頃で、広めの物件を確保しやすく、外国人労働者が働く工場が多いため、人気が高いエリアになっているようです。交通アクセスも、江戸川区の場合やJR総武線や東京メトロ東西線、足立区の場合は東京メトロ千代田線・日比谷線や東武スカイツリーラインなど、都心へのアクセスが便利で、通勤通学しやすいエリアであることも好材料になっています。

外国人の国籍で比較すると、江戸川区ではインドやベトナム国籍の方、足立区ではベトナムやフィリピン国籍の方が多く住んでいるという結果が出ています。(令和6年1月1日現在)江戸川区では小岩周辺の歓楽街にアジア系の店舗が多く、また足立区では竹ノ塚周辺に外国人向けの店舗が多くあり、これらの国籍の方が働きやすくて住みやすい下地が形成されているようです。
(出展:第1表 区市町村別国籍・地域別外国人人口 (上位10か国・地域)

行政としても、外国人向けの日本語教室や生活面でのサポートに力を入れており、官民が一体となって外国人を受け入れる体制があるため、住みやすいエリアとして認知されていると考えられます。

海外の高所得者層にも人気の東京都江東区

5位の東京都江東区は、豊洲などの再開発が進む湾岸エリアとして日本人にも人気が高く、上記の江戸川区や足立区に比べて家賃も高く、高所得者層の外国人駐在員が多く住んでいるエリアです。一方で、亀戸などは比較的手頃な家賃で住めるため、多種多様な外国人が住んでいるのが実態です。都心へのアクセスも良く、ITや金融系の業種で働く外国人駐在員にとっても利便性が高く、通学にも大変便利です。

中国系のスーパーや飲食店が多い亀戸周辺は、戦前から華僑(海外に住む中国人のこと)のコミュニティが合ったと言われています。戦後も移民は増え続け、彼らの生活ニーズに応える形で飲食店などの店舗が増えていったと考えられます。
豊洲や東雲などの湾岸エリアでは、英語対応の病院やインターナショナルスクールも整備され、駐在員が家族で住んでいるケースも多く見られます。

お台場や豊洲市場といった観光・レジャースポットも豊富で、2020年の東京オリンピックの開催に伴ってインフラが整備され、エリアの認知度が上がったことも起因しているかもしれません。

また上位のエリアと同様に、行政が多文化共生・国際交流を推進しており、多言語の対応や日本語学習の支援や、生活サポートが充実しています。
(出展:江東区の多文化共生・国際交流への取り組み

既に外国人コミュニティができているエリアを参考に、できることから取り入れてみよう

外国人が多く住むエリアは、日本で学ぶ・働くことがきっかけで来日し、最初は小さなコミュニティとして形成されたところに、次々と外国人が集まることでコミュニティが拡大し、外国人向けのビジネスとして飲食店や小売店といったサービスが充実しています。彼らの生活がより快適になることによって、さらに外国人が集まりやすくなり、コミュニティやサービスが拡大するという好循環が生まれていると考えられます。

行政のアンケート結果によれば、日本人との文化や生活習慣の違いに対する戸惑いや、日本人とのコミュニケーションがまだまだ希薄であることは課題としてあるものの、少子高齢化が進み労働力不足が懸念される日本において、外国人との共生はこれまで以上に重要になるでしょう。

今後も、訪日外国人が増え続けることが予想されます。既に外国人が多く住むエリアの取り組みを参考に、他の市区町村でも今すぐできることから取り入れてみてはいかがでしょうか。

関連・おすすめ記事

SHARE:

© 2011-2025 Kairos AI Co.,Ltd.